ホーム > メインコンテンツ > 決算書・財務分析要因その1 減価償却
戻る
次へ

決算書の「利益」は、なぜ信用してはいけないのか?
~ 決算書に潜む破滅のワナ~


● 要因その1 減価償却


■ 減価償却とは

固定資産(例えば建物とか車両、コピーやFAXなどのOA機器etc)を購入しても、会計上は、すぐに経費にはなりません。
会計上の処理は、取得時に、貸借対照表の「資産の部」に、「固定資産」として計上します。

これらの資産は、会社を経営していくうえで、何年にも渡って使用可能なものですので、その使用可能年数で、徐々に経費にいくことになります。
これを「減価償却」といいます。
そして、経費にしていく一定期間を「耐用年数」、その年の経費になった額を「減価償却費」といいます。

そして、ここで問題になるのが、「耐用年数」です。
税金を計算する上で、「耐用年数」が会社によって違っていたら不公平にあたるため、国が定めている年数で、減価償却費を出さなくてはなりません。

「国が定める耐用年数」が、「実態に即した年数」であれば問題ないのですが、国も税金をできるだけ多く徴収したいため、実態よりも長い年数となっています。
これがどういうことを意味するのかは、後で事例と共に説明します。


■ 減価償却資産の範囲

減価償却を行い、経費化していかなければならない固定資産(減価償却資産)は、下記に掲げるとおりです。



■ 計算方法

1. 定額法
購入金額に90%を掛けた金額に、さらに償却率を掛けて減価償却費を計算する方法で、
計算上の償却費は、毎期定額となります

<計算式>
購入金額×90%×法定耐用年数表で定められた定額法の償却率

上記の算式に基づいて算定した償却限度額が、普通に減価償却をする時の償却額になります。

ex)
建物を2,000万円で、1月1日に購入しました。当期の償却額は?
(耐用年数は20年で、償却率0.050 事業年度は1月から12月と仮定します。)

算式)   20,000,000×0.9×0.050=900,000

この建物の減価償却額は、90万円で、これから毎年90万円ずつ、減価償却費として20年にわたり経費処理します。

2. 定率法
購入金額から今まで経費として計上した減価償却費の合計(減価償却累計額といいます)を引いた残額(未償却残高)に、償却率を掛けた金額を償却額とする方法です。
特徴として、初年度が一番減価償却費が大きくなり、徐々に減価償却費は少なくなります。

<計算式>
(購入金額-減価償却累計額)×法定耐用年数に応ずる定率法の償却率

ex)
大型コンピューターを200万円で1月1日に購入しました。
初年度と2年目の償却額は?
(耐用年数は4年、償却率は0.438 事業年度は1月から12月とします)

初年度)
2,000,000×0.438×=876,000
二年度目)
(2,000,000-876,000)×0.438=492,312

このコンピュータの減価償却額は、初年度87万円、2年目が49万2312円となります。


定額法
  ・事業年度ごとに費用を平均配分する。
  ・未償却残高の計算が容易。

定率法
  ・資産が新しい時期に多くの償却費を計上することができる


■ 問題点

例えば、こんな事例を考えてみます。
レストラン業を営もうとする人が、起業準備の一環で、テナントとして借りている店舗の内装を、流行の雰囲気にしようと考え、3,000万円の工事を施工しました。
内装工事は、附属設備に該当しますので、耐用年数20年で減価償却を行います。


当然ですが、税金を計算する上では、20年かけて費用化していきます。

しかし、これは実情をまったく反映していません。
飲食業を営まれている方は、お分かりだと思いますが、平均すれば5年ほどで、再度、内装工事が必要になります。

なぜなら、この競争の激しい時代に、同じことを続けて売上が維持できるのは、せいぜい3~4年だからです。
飲食店の場合、よほどの立地条件でない限り、開店後3年ほどたつと、売上が徐々に落ちていきます。
そして、「何らかの手を打たないとダメだ」と切実に感じ始めるのが、5年目くらいです。

つまり、実際には5年しか資産として存在していなかったのにもかかわらず、会計上は、20年という長期に渡って、貸借対照表の資産の部に君臨し続けるわけです。
これでは、現実の経営と会計が、大きく乖離してしまいます。

どれだけ実態とかけ離れるかというと・・・

20年で計算した場合

30,000,000×90%÷20=1,350,000

毎年135万円ずつ経費化されます。

しかし、実態に即した5年で計算した場合

30,000,000×90%÷5=5,400,000

つまり、税法と実態の差は、毎年405万円(540万円-135万円)にもなり、税理士が作成した決算書の利益より、会社の本当の利益は、405万円も少ないのです。

仮に、このレストランが、決算書上は毎年100万円の利益を上げていたとしても、実際は、毎年305万円の赤字(100万円-405万円)だということです。

5年後に内装工事が必要になった時には、決算書上は500万円の内部留保があるはずなのに、実際は、1,525万円の赤字会社ということです。
これでは、リニューアルどころか、ギブアップするしかありません。

あなたは、「そんなことになるなら、出来るだけ実態に近づけるため、少しでも多くの減価償却をすべきだ」と考えたかもしれません。

しかし、ここにも税務署が仕組んだワナがあります。
先ほど、減価償却には2通りの方法があり、「定率法」を使えば、新しい時期に多くの償却費を計上できると述べました。
「それなら、定率法で減価償却すれば良いじゃないか」と思われるかもしれませんが、実は、それは無理なのです。

なぜなら、建物については、「定額法」しか適用できないと税法で決められているからです。
最も金額の大きな「建物」について、定額法しか税務署が認めないということにも、
「少しでも多くの税金を取るために、利益の出やすいルールを決めている」ということがお分かりいただけると思います。

戻る
次へ